※引用元:ドラフト会議
https://www.draft-kaigi.jp/highschool/high-draftnews/71691/


皆様、こんにちは。

北瀬コウです。


先日より、「森岡 大智という男」と題して、彼の活躍を中心に執筆をしております。

今回は、その後編になります。

前編については、下記リンクからご覧ください。


それでは、早速後編にまいります❗️


⚫︎名門に挑んだエース


初戦の石橋(栃木)との試合で完封勝利を収めてから1週間後の3月28日(火)、能代松陽はベスト8の椅子を懸けて3回戦に臨んだ。

相手は、前大会王者の大阪桐蔭(大阪)。


大会ナンバー1投手と騒がれるエース左腕、前田 悠伍(3年)を軸に、春の選抜連覇を狙う。

朝の爽やかな日差しが差す中、第一試合の能代松陽 vs 大阪桐蔭の試合が始まった。


能代松陽が先攻となったこの試合、大阪桐蔭は、注目筆頭の前田(3年)ではなく、背番号10の右腕、南 恒誠(3年)が先発マウンドへ上がった。

南(恒)(3年)は、能代松陽の1番 大高(3年)、2番 淡路(3年)、3番 虻川(3年)を3者凡退に抑え、上々の立ち上がりを見せた。


そして能代松陽の先発マウンドは、絶対的エースの森岡(3年) が上がる。

勝った後の先々の日程を想定するとやや心配ではあるが、1週間の十分な調整期間があり、かつ相手が名門となれば、妥当な判断と言えた。


注目の立ち上がりだったが、1番 小川(3年)には空振り三振を取るも、その後の2番 山田(3年)と3番 徳丸(2年)には、初戦では見られなかった四球を与えてしまう。

早くもピンチを背負ったが、ここはギアを上げ、4番 南川(みながわ)(3年)と5番 佐藤(3年)を見事連続三振で切り抜ける。

2つの四球を与えたが、この回は全て三振でアウトを取った。


大阪桐蔭との試合で力投する森岡(3年)
※引用元:スポーツ報知
https://hochi.news/articles/20230328-OHT1T51010.html


この時点で、私は確信を持つことが出来た。

前編で触れた、「相手が名門に変わった時に森岡(3年)の投球が通用するのか否か」ということに対して、間違い無く森岡(3年)の球質は並の投手には無いキレを持っており、大阪桐蔭の上位打線にも通用している、と。

改めて森岡(3年)の凄みを垣間見た瞬間であった。


高校野球界の名門校である大阪桐蔭と田舎の公立校の能代松陽との対決は、誰もが大阪桐蔭が主導権を握ると予想していただろう。

しかし、この試合展開を予想した人はどれだけいたのだろうか。


あっという間に5回が終了した。

スコアは0-0の無得点、驚くことに両者共にノーヒットである。


大阪桐蔭の南(恒)(3年)は、140km/h前後のストレートに、キレのあるスライダー、カーブ、チェンジアップを織り交ぜ、能代松陽打線を順当に料理していく。

許したランナーは、4回の3番 虻川(3年)のセカンドゴロで生じたエラーでの出塁の一度のみである。


対して能代松陽の森岡(3年)も、2回以降で許したランナーは、4回の3番 徳丸(2年)に与えた四球のみで、2回、3回、そして5回を3者凡退に抑えた。

とりわけ、3回で投じた球数は僅か5球であったことや、5回2死の場面で8番 南(恒)(3年)をストレートで空振り三振に仕留めた瞬間は、まさに圧巻の投球だった。

完全に投手戦となったこの試合、5回終了時点では、どちらに流れが傾くのか全く予想が出来なかった。


グラウンド整備終了後の6回は試合が動きやすい。

まさにその通りとなった6回表の能代松陽の攻撃、先頭の8番 佐々木(陸)(3年)がセンター前へ両チーム通じて初めてのヒットを放つ。


6回表、能代松陽の8番 佐々木(陸)(3年)が両チーム通じて初安打を放つ。
※引用元:讀賣新聞
https://www.yomiuri.co.jp/sports/koshien/spring/20230329-OYT1T50090/


続く9番 保坂(3年)は送りバントを成功させてランナーを進め、1番 大高(3年)は死球により出塁する。

初戦で3安打猛打賞の2番 淡路(3年)だったが、鋭いピッチャー強襲の当たりが抜けず、1-6-3の併殺でチャンスの芽を摘まれた。


そして6回裏の大阪桐蔭の攻撃も、先頭の1番 小川(3年)が三遊間を破るレフト前ヒットで出塁するも、2番 山田(3年)が送りバント失敗でランナーを進めることが出来ず、3番 徳丸(2年)は6-4-3のショートゴロ併殺に終わった。

試合は動きつつあるが、この回は両者同じような展開で無得点となり、互いに譲らない。


7回表、能代松陽は先頭の3番 虻川(3年)がしぶとくサードへの内野安打で出塁、4番 齋藤(3年)が四球で出塁し、無死1・2塁の大きなチャンスを迎える。

スタメン唯一の2年生である5番 佐々木(駿)(2年)に対しては、持ち味の打撃を信じて送りバントではなくヒッティングで指示を出した工藤監督だったが、ここは空振り三振に倒れる。


6番 柴田(3年)の打席の間に南(恒)(3年)の悪送球でランナー2・3塁とするも、柴田(3年)は痛恨の見逃し三振。

7番 森岡(3年)もライトフライに倒れ、ビッグチャンスを逃し無得点に終わった。


結果として、工藤監督の采配が裏目に出ることとなった。

佐々木(駿)(2年)に送りバントをさせていれば、あるいは柴田(3年)にスクイズをさせていれば、もしかすれば戦況は変わっていたかもしれないと、今振り返ってもそう考えてしまう。


この7回が、まさに試合のターニングポイントだった。

大きなピンチを切り抜けた大阪桐蔭は、先頭の4番 南川(3年)がライトへフェンス直撃のスリーベースヒットを放ち、無死3塁とする。

続く5番 佐藤(3年)はセカンドフライに倒れるも、6番 村本(3年)が追い込まれてからのスリーバントスクイズを決め、遂に大阪桐蔭が均衡を破って1点を先制した。

5回まで無安打に抑えられ、大阪桐蔭らしくない戦況となっていた中で、この1点は何か執念のようなもの、苦肉の策のように感じ取れた。


7回裏、1死3塁で大阪桐蔭の6番 村本(3年)がスリーバントスクイズを決める。
※引用元:朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/ASR3X5S63R3XPTQP005.html


8回表、能代松陽は1死から9番 保坂(3年)のセカンドゴロの内野安打、悪送球の間に2塁へ進塁し、三度チャンスを作る。

ここで、大阪桐蔭の西谷監督が動き、ここまで力投してきた南(恒)(3年)からエース 前田(3年)へスイッチする。


決して派手に打たれたわけではないが、なんとしてでもこの1点を守り抜くためには、エースであり、主将でもある前田(3年)の力が必要だった。

西谷監督の采配は功を奏し、能代松陽の4巡目に入る1番 大高(3年)、2番 淡路(3年)を打ち取って火消しに成功した。


結果、7回に挙げた1点が決勝点となった。

0-1で能代松陽は敗れ、ベスト8進出とはならなかった。


森岡(3年)は8回を投げて球数は僅か99球、被安打2、失点1、奪三振5という、非常に無駄の少ない投球成績であった。

4四球は与えたが、失点には影響していない。


私は、大阪桐蔭のような名門校や格上の相手に勝つために必要なこととして、「自分たちのミスをいかに無に出来るか」が重要であると考えている。

打たれることは仕方が無い、それで点を取られてしまうことも仕方が無い。

しかし、ミスさえ減らせれば、あるいは無くせればその失点は比較的最小限に抑えられる。

勝つことは出来なかったが、この試合はまさにそれを体現したものとなった。


能代松陽は初戦に続き、各選手が森岡(3年)の好投を支え、この試合もノーエラーだった。

さらに、センターの淡路(3年)をはじめ、打者に応じてポジショニングを変えた守りが功を奏し、相手をしっかり研究していたことが窺える。

チームスローガンである「守りの野球」は、決して伊達ではなかった。


試合後、退場する能代松陽の工藤監督と選手たち。
※引用元:日刊スポーツ
https://www.nikkansports.com/baseball/highschool/photonews/photonews_nsInc_202303280001094-0.html


世間では、「あの大阪桐蔭が2安打に抑えられるなんて・・・。」、「能代松陽とは一体何者だ❓」といった反響が見られ、能代松陽は今大会に一つの爪痕を残した。

この試合を解説した智弁和歌山(和歌山)前監督の高嶋 仁 氏は試合中、「彼(森岡)が智弁和歌山にいてくれてたら大阪桐蔭に勝てた」と話した。

ただ、「こういった良い試合は絶対に勝たなアカン」とも話し、勝てなかった要因として挙げられる攻撃力が今一つであること、チャンスを活かし切れなかったことなどが課題として露呈した。


攻撃力の力不足、この課題が能代松陽にとって、後に大いなる難敵となる。


⚫︎早すぎる終幕


春の選抜は、決勝で山梨学院(山梨)が報徳学園(兵庫)を7-3で破り、初優勝を飾る結末で幕を閉じた。

そんな中、一つの朗報が入った。


日本高等校野球連盟より、森岡(3年)をU18日本代表の一次候補メンバーに選出した。

春の選抜の好投により評価が急上昇し、晴れて侍の候補に抜擢されたのだ。



森岡は(3年)は3日間の強化合宿に参加し、つい先日まで甲子園で対戦していた大阪桐蔭の前田 悠伍(3年) や村本 勇海(3年)らをはじめ、多くの精鋭らと共に技術を鍛えた。

春の選抜に加え、U18日本代表候補強化合宿へも参加し、着実に良い経験値を積むことが出来た森岡(3年)には、夏に向けての期待がより高まった。


しかし、現実は相反するものとなった。

5月から開幕した春季県大会では、能代松陽は3回戦で敗退し、波乱が巻き起こった。

2回戦の横手城南戦では、3-2のサヨナラで辛勝するも、3回戦の花輪(統合により現在は鹿角)戦では0-1のサヨナラで敗れた。


課題は攻撃力だ。

いずれの試合も森岡(3年)の登板は無かったが、それが原因ではない。

攻撃力さえ機能していれば勝てる試合だった。


2回戦の安打数は8だが、三振数8、残塁数9は、相手を上回る数字だ。

また、3回戦の安打数は6で、三振数6は相手より下回っていたものの、残塁数6は上回っていた。


安打数が物足りず、残塁数が相手よりも多い。

「守りの野球」を掲げていても、野球は点を取れなければ勝てない。

春の選抜から続く課題を残す形で、夏を迎えることとなった。


東北地区の春季大会は、他地区よりも遅く5月から6月頃にかけて行われる。

つまり、春季大会が終わればすぐに夏の地方大会がやってくるのだ。


7月、あっという間に夏の地方大会が開幕した。

春季東北大会ベスト4の明桜をはじめ、秋田商、湯沢翔北、秋田中央なども春季大会では功績を挙げ、シード校入りした。

能代松陽1強とは言えない大会である。


ただ、経験値の面では能代松陽が圧倒的に上だ。

前年の夏の甲子園を経験した5人のメンバーを中心に秋季大会を勝ち抜き、春の選抜では大阪桐蔭を苦しめた。

今こそ集大成の力を見せる時であると、ノーシードから大会に臨んだ。


しかし、その集大成はベスト8で力尽きることとなった。

ベスト8まで駒を進めた能代松陽は、準々決勝で秋田商と対戦した。


試合は9回で決着が付かず、延長タイブレークにもつれ込む接戦となった。

2-2で迎えた延長10回だったが、5回途中から無失点で力投してきた森岡(3年)がタイムリーヒットを浴びて3点を失い、これが決勝点となった。


味方の援護を信じ、エースは腕を振り続けた。
※引用元:スポーツ報知
https://hochi.news/articles/20230722-OHT1T51176.html


2-5で敗れ、3季連続の甲子園には届かなかった。

3回戦では奮起したものの、課題の攻撃力の克服に至ることが出来なかった。


試合後、森岡(3年)は「今までお世話になった能代で働き、恩返ししたい」と話し、プロでもなく大学でもなく、地元就職の意向を明らかにした。

春の選抜から株を上げ、大学からのオファーもあったが全て断った。

澄ました顔とは裏腹にマウンド度胸が強い森岡(3年)は、高校入学時から決めていた「野球は高校まで」の意向を変えることはなく、ここでも気持ちの強さが表れた。


夏の甲子園に惜しくも届かず、かつ早々に引退を表明し、2つの意味で早すぎる終幕となった。

U18日本代表の選出とはならず、これ以上多くは語られなくなったが、彼はまさしく全国区の投手だった。


森岡 大智が残した功績を、私は忘れない。



⚫︎終わりに


はい、いかがだったでしょうか❓

今年はWBCイヤーということで、前回のWBCが行われた2023年の出来事として、森岡君を中心とした、チームの活躍を高校野球見聞録に是非とも記録したいと思い、執筆に至りました。


やはり印象的なのは大阪桐蔭との試合ですね。

能代松陽も秋田の中では強豪校とはいえ、悪く言ってしまえば田舎にある公立校です。

そんな田舎の公立校が、今や高校野球界隈のトップに君臨する大阪桐蔭を、あそこまで追い詰めるとは全く予想していませんでした。


大阪桐蔭側としても、決勝点となったスリーバントスクイズは苦渋の決断だったのかもしれません。

森岡君から着実に点を取れていれば、試みることはなかった作戦だったと思います。


経験豊富なメンバーが揃っており、森岡君だけのチームではなかったため夏も期待していたのですが、道半ばで終わってしまったことは非常に残念でした。😢

攻撃力が今ひとつ、と書かせて頂きましたが、そのピースさえ揃えば甲子園でも勝てるチームだったと思います。


森岡君は卒業後、能代市にある木材加工業者に就職し、忙(せわ)しく業務に勤めています。

野球の才能もあっただけに少々勿体無い気もしますが、私は彼の選択を尊重したいと思います。

今後、森岡君を超えるような選手が能代松陽に現れてくれると良いですね。🙏


さて、長くなりましたが、これにて以上となります❗️

いよいよWBCが開幕し、春の選抜の組み合わせ抽選会も行われます。

野球好きにはたまりませんね。☺️

WBCを観て、センバツも観る、エンジョイしていきましょう❗️✊


それでは皆様、ごきげんよう❗️